まだまだ解除されない「横尾忠則の緊急事態宣言」

State of emergency declarationREVIEW
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コロナ時代をいかに生き抜くか。先の見通せない日々を生きる人のための強烈なヴィジョン。

夢か現実か★★★★

ぶっ飛んでいる★★★★

健康になれそう★★★

 コロナ禍の危機的状況で「不要不急」な芸術やアートにできることはあるのか?

 芸術家のレーゾンデートルを揺るがすこんな問いかけへの横尾氏の答えが、横尾忠則現代美術館で開催中の「横尾忠則の緊急事態宣言」展です。

横尾忠則という芸術家

Yokoo Tadanori Museum of Contemporary Art

 横尾忠則は神戸新聞社のグラフィックデザイナーからキャリアをスタートさせ、「画家宣言」をして職業画家に転じた経歴を持つ、半ば伝説化した美術家です。

 ある美術館の催しで横尾氏本人の話をきいたことがありますが、アンディ・ウォーホルのファクトリーに出入りしていたときの話をしておられ、ウォーホルといえば美術本のなかの存在だったわたしには衝撃的でした。

 横尾氏の作品は生や死といった伝統的なテーマを、現代的で大衆的なイメージを用いながら、鮮やかな色彩で描いているところに特徴があります。

 時間や空間を超え、あの世とこの世を自由に行き来してきたかのような、かなりぶっ飛んだ画家だと思います。

《WITH CORONA》

 今回の「緊急事態宣言」展では多種多様なイメージにマスクなどを組み合わせたシリーズが展示されています。

 この《WITH CORONA》シリーズは、横尾氏のウェブサイト「YOKOO’S VISION」で日々公開されているものです。

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 例えば9月9日には大量の口腔のイメージとともに、こんな言葉が添えられていました。

ここ半年近くの絵はコロナとのコラボレーションってとこかな。コロナ禍がなければ描けない絵だ。コロナのエナジーを、一度受け入れて、濾過してクリエイティブ・エナジーに変換して絵画化する。コロナ錬金術?

横尾忠則「YOKOO’S VISION」

 この言葉にコロナの負のエネルギーさえもインスピレーション源として創作活動を続ける画家の底力をみました。

コロナ時代の「新しい芸術様式」

State of emergency declaration

 ウイルスのような目に見えない敵に対峙すると、アマビエのような神的な存在に寄りすがりたくなるのが人間の心理ではないでしょうか。

 「緊急事態宣言」展のなかでも強烈な存在感を放っていた《戦場の昼食》では、ヒンドゥー教の神々が描かれています。

 この絵は横尾氏がインドの職人に描かせた絵をベースに、「LOVE」「MONEY」といった文字や弾痕が書き加えられ、聖俗入り乱れたカオスな雰囲気を醸し出しています。

 コロナ禍という「緊急事態」においては、この作品のようにリアリズムとイマジネーションが地続きとなり、世界は現実味を失いかけているのかもしれません。

 そのような時代の混沌さえも糧として、そこに一筋の光をもたらすのが、横尾忠則という芸術家なのです。

Oji Park Kobe
横尾忠則現代美術館の窓からの眺め。正面にあるのは神戸文学館。
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